気合いと根性型の営業からの脱却〜BtoBのインバウンド営業/プル型営業のプロセス・手法を徹底解説

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インバウンド営業とは?

こちらの記事で解説したアウトバウンド営業の対となるのがインバウンド型営業/インバウンドセールス/プル型営業です。
端的に言えば、「見込み客から問い合わせをもらって、問い合わせをした人に対して営業を行う」手法です。
性質としてはアウトバウンドセールスがナンパ、インバウンドセールスがマッチングアプリに近しい存在です。一定の需要がある見込み客に対して営業を行えため、効率的に営業活動を進めることが可能です。

スタートアップ企業で、ゼロベースでインバウンド型セールスを立ち上げた筆者がインバウンド型の営業活動のプロセス・手法について解説します。

BtoBの営業活動におけるインバウンド営業の重要性

インターネットやSNSが深く浸透している昨今、ビジネスにおける情報収集でも当然のようにそれらが活用されています。

インターネット普及以前には、営業を受けることで、製品/サービスを知るということが当たり前の時代でしたが、現在ではビジネスにおける情報収集も能動的に行われています。

競合となる企業では、当然のように問い合わせや資料請求が行われるような仕組みが用意されているため、自社がそのような状態となっていないのであれば、検討の候補から漏れることとなり、機会損失が生じます。

本記事で得られる知識・メリット

本記事ではインバウンド営業/プル型営業の全体像と、特に問合せや資料請求を発生させる方法について、筆者実体験を元に解説しています。

これまでアウトバウンド型の営業活動を行ってきた場合、インバウンド型の営業活動を開始する際に参考となる情報があるかと思います。

インバウンド営業のプロセス

インバウンドセールスのプロセスは大きく以下のプロセスに分かれます。

聞きなれない概念と思いますが、”リード”というものがあります。
マーケティング用語で、主にマーケティング活動によって生み出される見込み客を指す言葉です。

明確な定義はありませんが、問合せや資料請求、セミナー申し込みなどにより、顧客の同意の下に個人情報(企業名、役職、氏名、メールアドレス、電話番号)を入手できた場合に、リードを獲得した、と見なすことが一般的です。

リードジェネレーション(リード獲得)

接点がない状態から、見込顧客の情報を取得することです。
資料請求や見積依頼、問い合わせなどを受け、見込顧客の社名や役職、氏名、メールアドレスなどの情報を合意の上で、取得します。

リード創出を行う場所は、大きく自社メディア(オウンドメディア)と外部メディアに分けられます。自社メディアは企業のホームページで運営されているブログや、それ以外のメディアを指します。外部メディアは資料請求サイトやビジネスマッチングサイトなどを指します。

外部メディアの場合、初期費用や掲載費用、資料ダウンロード発生の都度の従量課金などが発生しますが、掲載先のメディアが広告掲載などによる集客を行っているため、短期的に問い合わせの発生を目指すことが可能です。

この記事をご覧いただいている方は、自社メディアをまだ持っていない方かと思います。自社メディアを立上げ、ある程度の成果が得られる状態となるまでには一定の時間を要するため、まずは外部メディアも組み合わせて利用することをお勧めします。

取り扱う商材や価格帯によって掲載すべきサイトは異なりますが、代表的な資料請求サイト/ビジネスマッチングサイトを以下に掲載しておきます。

自社メディアについては、コーポレートサイト内、もしくは別のサイトとして、WEBメディアを開設するイメージです。ブログのようなイメージで、見込み顧客が関心を持ちそうな記事を掲載し、その記事から、資料請求や問合せの発生を目指します。

運用に乗れば、予算をかけずに見込顧客を継続的に獲得することが可能となりますが、一朝一夕でこのような状態を作ることは難しく、記事の作成・アクセス解析・記事の改善のサイクルを回す必要があり、長期的な施策となります。

リードナーチャリング(リード育成)

リードを獲得できたとしても、必ずしも即時的に発注をするお客様ばかりではなく、情報収集を目的とした資料請求も多くの割合を占めます。
そういったリードは半年後や1年後、もしくは数年後に発注する可能性はあるため、すぐに発注しないからと言って見切ってしまうわけにはいきません。

そこで行うのがリードナーチャリングです。
ナーチャリングは育成を意味する言葉で、現時点で必要性の認識が薄い状態や理解が甘いリードに対して、訴求や啓発を行うことによって、購買意欲を高める活動です。

代表的な手法としては定期的にメルマガ配信を行い、直近のトレンドの移り変わりや自社の新サービスリリースなどの情報を流します。
例えばですが、動画制作サービスの資料をダウンロードしたリードに対し、直近の動画制作のトレンドや、SNSユーザーの動画視聴の動向調査結果などのメルマガを流すイメージです。

リードクオリフィケーション(リード選別)

リード数が数百件程度であれば、全件アタックすることも可能ですが、1000件を超えてくると、全件に対して同じ熱量でアプローチすることが難しくなります。

そのため全リードの中から、見込みがありそうなリードを選別し、可能性が高そうなリードに対して、個別のメール送信や架電など、コストの高い活動を行う対象を決定します。

大きくは属性と行動の2軸があります。

  • 属性:自社の商材がフィットするターゲット像と合致しているかを、業種・業態・規模・売上高・設立年数などのデモグラフィック情報により判断する
  • 行動:サイト訪問や資料請求、資料閲覧、メール開封などの行動を測定の上、スコアリングし、購買意欲がどの程度あるかを判定する

属性と行動では、属性の方が優先されます。いくら購買意欲や関心が強いリードだったとしても、
そもそもターゲット像と合致しない場合、担当者の興味が強かったとしても、社内決済を通過できず、最終的に導入ができない可能性が高いためです。

また、行動を測定するためには、MAツールが必要となります。
MarketoやPardot、Hubspotなどが代表的なMAツールです。

商談化

ここからは営業の領域となります。
製品・サービス説明の打ち合わせを打診し、訪問/オンラインミーティングにより、自社の製品/サービスを見込顧客に対して提案します。

これまでのマーケティング活動により、サイト内のどのページを参照したか、などのデータを取得できているため、営業活動を進める際の参考情報として活用が可能となります。
顧客の関心事に対して適切な提案を行うことにより、より確度の高い商談の進行が可能となります。

提案後、見込顧客からのレスポンスがない状態が、しばしば発生します。BtoBのセールスにおいては相手も別の業務と平行して検討を行っている場合が多いため、どうしても優先順位が下がりやすくなります。
そのような状況では追客を行うことが重要となります。
インバウンドセールスの仕組みを整えていれば、メールの開封やサイトへのアクセス、資料の閲覧を追える状態となっているため、それらの情報も参考情報として使用しながら、顧客が現在どの状態となっているかを把握の上、アクションを行う必要があります。

  • 検討を進行している
  • 検討が中断している
  • 検討が終了している(=発注を断念した)

検討結果が発注の見送りや、競合への発注であった場合、なぜそのような判断となったのか失注理由を確認しましょう。
具体的な失注理由が分かっていれば、以下のような可能性をつかむことが可能となります。

  • 自社製品/サービスの改善により再提案の余地がある
  • 競合サービスの契約終了間際のタイミングでリプレイスの余地がある

成約となった場合も、なぜ自社製品/サービスが選ばれたのかの理由を確認しましょう。
自社が思っている強みと、顧客から評価されたポイントは必ずしも同じではありません。
判断理由をヒアリングすることによって、自社が気付いていなかった強みを発見できる可能性があります。

さらには自社の独自性がある強みが評価されている場合、競合サービスの向上によってはリプレイスの懸念が発生することとなります。判断理由をヒアリングすることによって、そのような危機も察知することが可能となります。

継続

継続型の製品/サービスの場合には、契約が長期間継続されることや、アップセルやクロスセルを目指します。

  • アップセル:上位のプランの切り替えやオプションの追加などにより契約金額がより高額とする活動
  • クロスセル:自社の別商材を提案する活動

買い切り方の製品/サービスについては、リピートをしてもらえるように定期的に接点を持ち、リピートや追加発注を目指します。

インバウンドセールスの成功の要件

インバウンド型のセールスにおいて最も重視される指標はLTVとCACです。

LTV(Life Time Value、顧客生涯価値)>CAC(Customer Acquisition Cost、顧客獲得コスト)

LTV(Life Time Value、顧客生涯価値)がCAC(Customer Acquisition Cost、顧客獲得コスト)を上回っていれば、健全な状態といえ、インバウンドセールスの活動への投資を加速させることが可能です。

例えば、月額1万円のサービスの顧客を1社獲得する際に10万円のコスト(広告費、マーケティング費用、営業費用)を要しているとすれば、平均継続期間が10か月以上であれば、LTV>CACの関係性が成立しているといえます。

インバウンド型の営業活動を行うべきか?

基本的にはインバウンド型の営業活動も併用することをお勧めしますが、以下のような状況の場合には必ずしもマッチしない可能性があります。

  • 新規性の強い商品
    • まだ市場に浸透していない新規性の強い商品の場合、市場のニーズも形成されていないため、検索流入や資料請求などの行動が起こりづらい傾向にあります。
  • 高単価な製品・サービス
    • 年間数千万以上などの製品・サービスとなると広告や検索から流入した企業のうち、それを購入できる企業はかなり限定されます。CACが高額となりやすいため、費用対効果が得られづらい傾向にあります。
  • 即時的な効果を求められる
    • インバウンド型のセールスは、始めたからといって初月から売り上げが発生することは稀です。
    • 徐々にアクセスが増え、その一部がリードとなり、さらにその一部が成約するイメージのため、効果が出始めるまでに半年~1年程度を要する、長い目で考える必要があります。
    • このような性質の手法のため、今月や今四半期の売り上げだけを追いかけている営業組織にはマッチしません。
  • ”気合と根性”を重んじる企業文化
    • 営業が”頑張って”売り上げを立てることを重要視する傾向が強い企業文化がある場合、インバウンド型の営業活動に対しての社内理解を形成することに苦戦することとなります。
    • 成果が上がったとしても、”楽して成果を挙げている”という見られ方をする場合もあり、成果が適切に判断されないことがあるため、マッチしているとは言えません。

終わりに

この記事を見てインバウンド型の営業活動を開始したいと思われた企業様は、ぜひお問い合わせフォームからご連絡ください。

戦略立案から、営業フローの整理、コンテンツ制作フローの整備など、幅広い支援が可能です。

この記事を書いた人
WorkHack

2015年に早稲田大学を卒業。コンサルティングファームに新卒入社し、業務・システム領域のコンサルティングに携わりました。その後、スタートアップ企業にジョインし、動画制作事業を立ち上げ、自社の収益の柱となるまで育て上げ、さらに情報システムの責任者としてCRMやMAなどのツール導入を行いました。現在はSaasのカスタマーサクセスに従事する傍ら、製品の活用率向上や自社の業務フロー変革の取り組みを行い、幅広い領域で貢献をしてきました。
営業やマーケティングのプレイヤーの経験や高い解像度とテクノロジーと業務変革の知見の両方を持ち、お客様の業務の変革に貢献致します。

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